理想的なDACの出力の周波数スペクトラム「アパーチャ効果」

はじめに

離散時間信号をサンプリング周期に従ってDACから出力したときの周波数スペクトラムを計算する。量子化誤差は無視する。本記事の内容は下記の資料にも記した。

Release v0.8.0 · motchy869/Signal-Processing-Memorandum (github.com) 「0次ホールドされた離散時間信号の周波数スペクトラム」

arg maxarg min\providecommandrecterf\providecommand\providecommand\providecommandPr

主張

xd:ZC を離散時間信号とする。XdxdDTFTとする。Ts>0 をサンプル周期として xd の0次ホールドで生成した階段状の連続時間信号を x とする。

u:R{0,1} を幅 Ts のパルスとする。

u(t)={10t<Ts0otherwise

x は次式で表される。

x(t)=n=xd(n)u(tnTs)

次の図は Ts=1,xd(n)=sin(2πn/12)(0n24),xd(n)=0(n<0,24<n) の例である。

xの例
図1 xの例

x のFourier変換 X は次式である。

X(ω)=Ts2πexp(iTs2ω)(sincTs2ω)Xd(ω)

Xd(ω)2π/Ts 周期関数であることに注意すれば、Xd(ω) の第1 Nyquist領域の形状が位相回転 exp(iωTs/2) とレベル減衰 sincωTs/2 を伴いつつ周期的に無限に繰り返されていることがわかる。この現象は「アパーチャ効果」と呼ばれる。

次の図は図1に対応する X の例である。

Xの例
図2 X の例

導出

(1)X(ω)=F(n=xd(n)u(tnTs))(ω)=n=xd(n)F(u(tnTs))(ω)

ここで次式が成り立つ。

F(u(tnTs))(ω)=exp(iωnTs)F(u)(ω)=exp(iωnTs)12π0Tsexp(iωt)dt=iω2π(exp(iωTs)1)exp(iωnTs)=iω2πexp(iωnTs)exp(iωTs/2)(exp(iωTs/2)exp(iωTs/2))=iω2πexp(iωnTs)exp(iωTs/2)(2i)sinωTs2=2ω2πexp(iωnTs)exp(iωTs/2)sinωTs2=Ts2πexp(iωnTs)exp(iωTs/2)sincωTs2

これを式(1)に適用して次式を得る。

X(ω)=n=xd(n)Ts2πexp(iωnTs)exp(iωTs/2)sincωTs2=Ts2πexp(iωTs/2)sincωTs2n=xd(n)exp(iωnTs)=Ts2πexp(iTs2ω)(sincTs2ω)Xd(ω)

◻

投稿者: motchy

DSP and FPGA engineer working on measuring instrument.

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