GaussianノイズのDTFT

はじめに

工学の分野でしばしば登場するノイズのモデルとして white Gaussian noise があるが、 white である(エネルギー・スペクトラム密度が平坦である)理由を筆者は今まで考えたことが無かった。今更ながら気になったので考察する。正規分布する複素数サンプル時系列データの DTFT (離散時間 Fourier 変換)のエネルギー・スペクトラム密度が確率変数であり、分布が周波数に依らず一定であることを導出した後、数値実験の結果を載せる。

arg maxarg min\providecommandrecterf\providecommand\providecommand\providecommandPr

主張

NN,σ>0とする。連続時間信号X:RCは確率変数であるとする。これをサンプリング周期Ts>0でサンプリングしたN個の確率変数Xn=X(nTs)(n=0,1,,N1)は互いに独立であり、自身の実部と虚部も独立であり、それぞれN(0,σ)に従うとする。数列{Xn}の DTFT をY:RCとすると、|Y(ω)|2/(Nσ2)χ22に従う。

導出

[Re(Xn),Im(Xn)]N(0,σI2)である。ここにI2は2次の単位行列である。Y(ω)=n=0N1XnejωTsnであるが、XnejωTsnXnωTsnだけ回転させたものであり、これもまたN(0,σI2)に従う。正規分布の再生性からY(ω)N(0,NσI2)に従う。Y(ω)/(Nσ)の実部と虚部は独立でそれぞれ標準正規分布に従うので、|Y(ω)|2/(Nσ2)χ22に従う。

数値実験

ここでは、ディジタル無線のI,Q信号に加わる加法性ノイズを想定し、実部と虚部が独立に正規分布N(0,σ)に従う乱数列を考える。これを周波数fsamp=1kHzで10秒間サンプリングしたN=104個のサンプルの DTFT を 0.1 Hz 刻みで計算する。

以下に Mathematica による実装を示す。エネルギー・スペクトラム密度 (DTFT の絶対値の2乗)が確率分布し、分布が周波数に依らないことが確かめられる。また、エネルギー・スペクトラム密度をNσ2で除した値の累積分布がχ22分布のそれとよく一致することが確かめられる。

投稿者: motchy

DSP and FPGA engineer working on measuring instrument.

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