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はじめに
ADC のノイズにより、下位の数ビットはノイズが占めているときがある。先日、ADCの有効ビット数を求める必要に迫られたので、自分なりに理解したことをメモしておく。本記事では、Noise Spectral Density (NSD) が dBFS の単位でデータ・シート等から入手できる場合に、指定した帯域に含まれるノイズの総量が占める下位のビット数を計算する方法を示す。
関連文書
dBFS/Hz 表記された NSD の意味
ある周波数を代表点として、それを含む十分に小さい区間 B をとり、その区間に於けるノイズの時間軸方向の2乗平均を周波数軸方向に総和したもの
関連文書 [1] で述べられているように、フル・スケール
dBFS/Hz は無次元量である。/Hz の次元をもつ量ではない。このことは ADC のデータ・シート等で dBFS/Hz 表記された NSD が例えば -150 dB 等と記されていることから判る。
/Hz の次元をもつ量だとして解釈すると、例えば 10 Hz の幅をもつ区間のノイズを求めようとして x 10 すると -1500 dB となるが、ノイズが却って減少しており、明らかに正しくない。
dBFS/Hz 表記された定数の NSD を基に帯域内のノイズの総量を求める方法
ある周波数区間 B に於いて NSD がほぼ一定の値
NSD が対数表記(例えば dBFS/Hz)されている場合は取り扱いに注意を要する。結論から言えば
この式は両辺ともに無次元量である。
ノイズが占めるビットの数
ADC のサンプリング周波数を
信号が実数値であるから、周波数スペクトラムは Hermite 対称である。
以下ではサンプリングしたデータをディジタル低域通過フィルタ (LPF) に通し、ADC の帯域
LPF を通過するノイズの総量は NSD から計算できる。
ADC のデータ・シートでは
前記「dBFS/Hz 表記された定数の NSD を基に帯域内のノイズの総量を求める方法」で述べた方法で
ここに
ADC から得たデータのうち、ノイズに占有されている下位ビットの数は非整数を許せば
複素数値信号の場合
2個の ADC と Numerical Controlled Oscillator Multiplier (NCOM) を用いて複素数値信号を生成する機能が備わったデバイスでは、取得したデータの周波数スペクトラムが
複素数値信号に於いては、フル・スケールの正弦波
また、ノイズの信号は無相関で統計的な性質が等しい実部と虚部がある。そこで実数値信号の場合の議論で
取り込んだ離散時間信号を帯域制限した場合
ここでは次を仮定する:
- 信号は複素数値であり、実数,虚数成分のノイズの総量は等しい。
- 上述の方法により、実部,虚部成分それぞれに於いてノイズが占める下位ビットの幅
が解っている。 - 取り込んだ信号のノイズの周波数スペクトラムは平坦とみなせる。
このとき、取り込んだ信号を LPF に通して帯域を
帯域が制限されたことにより、仮定 3 からノイズ総量が