はじめに
物理系をディジタル計算機で制御するにあたり、積分をEuler法で近似することがある。本記事では正弦波をEuler法で近似的に積分した際の出力の窓関数付きFourier変換を導出し、高周波領域での位相変化、エイリアシングについて考察する。
導出
とし、連続時間の複素正弦波信号を考える。これを時刻からまで積分した信号はである。「0次ホールド機構の周波数特性」と同様に、矩形窓を通した、周波数表示されたのFourier変換を考える(窓の幅をサンプリング周期の整数倍に限っても影響が少ないことの説明は「0次ホールド機構の周波数特性」で述べられている)。とし、窓の幅をとする。の窓付きFourier変換を窓の幅で規格化したものは次式である。但し計算は容易なので過程は省略した。
次に、の積分をサンプリング周期のEuler法で近似したものを考える。Euler法で積分した結果の離散時間信号をとすると、これは漸化式に従う。但し初期条件としてとする。この漸化式を解き、次式を得る。
これを0次ホールドして得られる連続時間信号をとする。先ほどに対して行ったのと同様に窓付きFourier変換を計算すると、次式を得る。但し計算は容易なので過程の多くを省略した。
中の、周波数がである成分の振幅と位相を調べる。の極限に関して次式が成り立つ。
次に中の、周波数がである成分の振幅と位相を調べる。但し、と仮定する。次式が成り立つ。
サンプリング周波数が十分高い、すなわちであるとき、次の近似式が成り立つ。
数値例
今、とする。に於けるの振幅と位相の組はである。一方、の振幅と位相の組はおよそである。
次の図は近傍でのエネルギー・スペクトラム密度を示したものである。
元の周波数近傍のエネルギー・スペクトラム密度
低周波領域では絶対値が良く一致していることがわかる。
次に高調波を見る。次の図はサンプリング周波数の3倍の範囲までを示したものである。
高調波を含むエネルギー・スペクトラム密度
低周波の領域ではが重なって判別できない。また、サンプリング周波数の整数倍の位置に高調波が生じていることが判る。
以上の数値例を計算したMathematicaノートブックをここで公開している。